2製品が「JIDAデザインミュージアムセレクション vol.22」に選定
デザイナーに聞く、分析機器と医用機器のデザイン
島津製作所のデジタル式回診用X線撮影装置「MobileDaRt Evolution MX8 Version」および高速液体クロマトグラフ「Nexeraシリーズ」が「JIDAデザインミュージアムセレクション vol.22」に選定されました。
「MobileDaRt Evolution MX8 Version」
「Nexeraシリーズ」
それぞれの製品をデザインした、総合デザインセンター デザインユニットの杉江智哉と姜慧梨に、喜びの声のほか、デザインが完成するまでの過程やデザインへの考え方、今後の抱負などを聞きました!
島津製作所の分析計測機器と医用画像診断機器のデザインはどのようにして生み出されるのでしょうか?
「JIDAデザインミュージアムセレクション」とは
「JIDAデザインミュージアムセレクション」は、公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)が主催しています。「美しく豊かな生活を目指して」をテーマに、インダストリアルデザインが社会に寄与する質の高い製品を選定し表彰するとともに、その製品を収集保管して次世代に伝え、教育、産業、生活へ文化的貢献を行うことを目的としています。
2020年度のvol.22では220点の推薦があり、54点の製品が選定されています。
選定された製品の一部は「JIDAデザインミュージアムセレクション vol.22 東京展」で展示される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催の延期が発表されています。
「MobileDaRt Evolution MX8 Version」の概要と受賞歴
デジタル式回診用X線撮影装置「MobileDaRt Evolution MX8 Version」は、緊急性の高い医療現場での検査や病棟回診に用いられるX線画像診断装置です。国内外の医療機関で、新型コロナウイルス感染症の肺炎診断にも使用されています。
当社製品は走行性能を特長としており、2005年の「MobileDaRt」シリーズ販売開始から累計で5,000台以上を納入しています。
本製品は、2018年に「グッドデザイン賞」を、2019年に「機械工業デザイン賞 日本電機工業会賞」を受賞しています。
「Nexeraシリーズ」の概要と受賞歴
高速液体クロマトグラフ「Nexeraシリーズ」は、液体に含まれる微量な成分の検出に使用される分離分析装置です。製薬、食品、化学、環境など幅広い分野における様々な分析に貢献しています。最新のテクノロジーを活用し、分析の信頼性やスループットを高めます。
本製品は、2019年に「グッドデザイン賞」と「Red Dot Design Award」を受賞しています。
島津製作所デザイナーの喜びの声
デザインを担当した2人は、今回の選定を喜んでいます!
「島津製作所として初めて『JIDAデザインミュージアムセレクション』に選定されました。一般並びにJIDA会員からの推薦で選ばれたということで、とても嬉しく思っています。」
「両製品とも、企画のあり方からプロダクト、UIに至るまで全体を通して高く評価いただき、島津の一貫したものづくり体制によるトータルの質の高さを認めていただけたのではないかと思います。」
「MobileDaRt Evolution MX8 Version」を担当した杉江智哉
「Nexeraシリーズ」を担当した姜慧梨
受賞製品のデザインプロセス
それぞれの製品をデザインする過程で工夫したことや意識していたことについても質問してみました。
(杉江)「『MobileDaRt Evolution MX8 Version』のデザインで苦労したのは、メカ的な要素の多さです。医用画像診断機器は可動部が多く、関節や突出部をうまくデザインしないと見た目の一体感が損なわれてしまいます。技師や患者様をはじめとする幅広い病院関係者が納得できるデザインに仕上げるため、線の一つ一つにこだわりました。」
(杉江)「色の開発にも力を入れました。島津製作所の医用機器の基調となる、見る人の気持ちを明るくさせることを狙った新しい配色は、本製品を皮切りに、既に発売した製品や開発中の製品にも用いています。」
清潔感のある明るい配色を目指した
(姜)「『Nexeraシリーズ』はユーザーによってモジュールの組み合わせが異なるため、単体の製品としてもシステム全体としても配慮する必要がありました。島津製作所のデザイナーとして、主力の高速液体クロマトグラフを担当するのは光栄な機会であり、プレッシャーがかかる仕事でもありました。」
(姜)「ただ、そのような重圧をなるべく感じないように、他の案件と同じ気持ちでやろうと意識しました。プレッシャーを感じるほど良いデザインができなくなるからです。開発の途中、意見がぶつかることも多々ありましたが、最終的には多くのデザインを採用してもらうことができました。一人での仕事ではなく多くのメンバーのおかげだと思います。感謝しています。」
高速液体クロマトグラフは用途に合わせてシステムが構成される
分析計測機器と医用画像診断機器のデザイン
当社の分析計測機器と医用画像診断機器は、それぞれ異なる環境、用途で使用されることがほとんどです。デザイン面ではどのような違いを考えているのでしょうか?
(杉江)「医用製品は分析製品と比較して、『動く』『大きい』『ユーザーが複数』という特徴があります。多くの製品にアームやタイヤが付随するので、動作時の外装の干渉をなくすように形作るだけでなく、周囲の安全性にも注意しながらデザインする必要があります。」
(杉江)「大きさに関しても、人の背より高いものばかりであるため、目の前にいる患者様に恐怖感を与えず、安心するようなデザインとは何かを考え抜きます。ユーザーが複数であるという点においても、技師、使われる患者様、それぞれの視点から要求を満たせて初めて良いデザインだと言えると思っています。」
モックアップで前方の視界を確認
(姜)「『分析装置を購入する人はデザインを最優先に考えない』という言葉をよく耳にします。だから分析計測のデザインは妥協の余地がある、そう思う方も多いと思いますし、自分がユーザーならそう思うかもしれません。ただ、私はそれでも良いデザインであって損はないと思います。その損することはない感覚をデザインしています。デザインが最優先される要素ではなかったとしても、良いデザインはきっとユーザーに喜ばれるはずです。ユーザーの立場、設置環境、使い方、メンテナンスなど多角度からアプローチしながら進めています。」
(姜)「デザインは感覚的だと言われますが、個人的にはとても理論的で答えのある分野だと思います。その答えを探しながら分析製品をデザインしています。」
質感にもこだわったデザイン
デザインに対する今後の抱負
今回の選定に留まらず、デザイナーたちは活躍の場を広げるビジョンを持っていました。
(杉江)「医用製品のデザインを経て、多様なユーザーの目線に立って開発することの重要性を学びました。他分野でもこうした経験を活かせると考えています。特にヘルスケア分野など、島津製作所が今後力を入れようとしている分野では、ラボや病院といった枠が取り払われるかもしれません。産業機械や航空機器も含め、あらゆるユーザーが存在しています。新規分野に挑戦する島津のこれからを、デザインの力でリードしていきたいです。」
(姜)「今後はデザイン部門の力でできることを他部門や他の分野にも広げるために努力したいと思います。今回は製品デザイン以外にプロモーションなどにも関わり、とても勉強になりました。製品デザインだけでなく、その前の段階、その後の段階にも積極的に携わり、新しい価値を生み出せるようにしたいと思います。そして、デザインのリリースで終わりではなく、製品がどこでどのように使われているかまで調査し、今後のデザインに繋げていきたいと思います。」
当社製品は国内外で数多くのデザイン賞を受賞しています。ぜひデザインにもご注目ください!