UF Technologies

「分子」を重さで測る~質量分析技術~

物質に含まれる分子は特定の質量(分子量)をもっています。一つひとつの分子を質量の違いで分離して測定することで、高精度に分子の種類と量を特定するのが、質量分析技術です。それは、25mプールに入った塩1粒も検出できるほど高感度です。病気の原因物質の特定や治療薬の開発、食品中の残留農薬検出など、幅広い分野で、なくてはならない存在になりつつあります。

当社独自の超高速技術「UF Technologies」が拓く質量分析の新たな可能性

当社の独自技術「UF Technologies」は、Ultra-Fastの頭文字UFから命名した、圧倒的な高速性と高い感度の両立を実現する当社独自の技術ブランドです。質量分析の本質的な機能を大きく向上させます。

1. 数百ものターゲット成分の一斉分析

当社の質量分析計の特徴のひとつは非常に高速に分析できることです。これにより、1回の分析で、数百以上のターゲット成分を一斉に分析できます。たとえば、生体サンプル中の生体反応で生成された代謝物を一斉分析(メタボロミクス)したり、食品中の残留農薬や薬毒物を1度の分析でスクリーニングしたりすることができます。
(参考:LC/MS/MSメソッドパッケージ 一次代謝物、LC/MS/MSメソッドパッケージ 残留農薬)

141成分標準品混合物の一斉分析MRMクロマトグラム

<141成分標準品混合物の一斉分析MRMクロマトグラム>

2. データの高速サンプリングによる定量精度、再現性の向上

質量分析計の圧倒的な高速性は、サンプル中に含まれる成分量の測定精度(定量精度)や再現性にも影響します。定量のための時間依存データをより短いサンプリング周期で測定でき、信号ピークをより正確に捉えることで、定量精度や再現性が向上します。たとえば、製薬分野での医薬品の含有成分測定や、製造業における各国の規制対象物質の測定など、精密な定量が必要な用途でも広く活躍しています。COVID-19の重症化予測研究におけるバイオマーカー測定においても、当社の良好な定量精度が貢献しています。
(参考:LC/MS/MSメソッドパッケージ 修飾ヌクレオシド)

薬毒物12成分(各1ng/mL)のMRMをトリガーとしたプロダクトイオンスキャン測定

3. 正負両極性のイオンの同時分析による対象成分の拡張

質量分析では、測定対象の分子をイオン化して、電磁場で分離することで分子量を測定しています。分子には、正にイオン化しやすい分子と、負にイオン化しやすい分子が存在します。たとえば、食品中の残留農薬のスクリーニング分析においては、50 – 300成分ほどをターゲットに分析することが多いですが、そのすべてが同じ極性で検出できるわけではなく、正イオン分析モード、負イオン分析モードをそれぞれ測定することで初めて多成分を網羅することができます。正イオンと負イオンは別々に測定することも一般的ですが、当社の超高速な正負極性切り替え技術により、時間のロスなく、両極性の分子を一度に測定することが可能です。

グラフ

「UF Technologies」の要素技術

「UF Technologies」の要素技術
UF-Qarray™
UF-Lens™
UFsweeper™
UFswitching™
UFscanning™
UF-MRM™
感度と堅牢性を両立させた画期的イオンガイド技術UF-Qarray
メンテンナンス性を確保しつつ、イオン透過率を最大化するイオン光学系UF-Lens
高効率でイオンを高速搬送するコリジョンセルUFsweeper
感度のロスがない高速正負イオン極性切替技術UFswitching
どのようなスキャンスピードでも、マススペクトルのクオリティをキープする超高速スキャン技術UFscanning
超高速×高感度MRM測定を実現するUF-MRM

UF-Qarray™

感度と堅牢性を両立させた画期的イオンガイド技術UF-Qarray

UF-Qarrayはイオンをイオン化部(イオン源)から分析部まで効率よく搬送するための「イオンガイド」に関する技術です。イオンをイオンガイドの中心軸に収束させることで、イオンの搬送効率を高めることができます。また、イオンは電極から離れたイオンガイド中心部を通過するため、電極汚染の影響を抑制することができます。UF-Qarrayは感度の向上と堅牢性の向上を両立させた画期的な技術であり、極低濃度でのデータの信頼性、正確性が飛躍的に高まります。

UF-Lens™

メンテンナンス性を確保しつつ、イオン透過率を最大化するイオン光学系UF-Lens

UF-Lensは、高感度とメンテナンス性を両立させたレンズシステムです。2つのマルチポールRFイオンガイドを統合したシステムとしてイオン光学系を設計することにより、高い感度を実現しています。ツールフリーで取り外すことができ、クリーニングも簡単です。UF-QarrayとUF-Lensの2つのイオンガイド技術は、世界最高レベルの感度に大きく貢献しています。

UF-Lens

UFsweeper™

高効率でイオンを高速搬送するコリジョンセルUFsweeper

コリジョンセルは、イオンを勢いよくガス分子に衝突させることで、イオンの構造を壊すためのデバイスです。壊れたイオンを再度、質量分析することで対象分子の構造を詳細に調べることができます。UFsweeper は、コリジョンセル内でイオンを減速することなく、次々とスピーディにsweepingする当社の独自技術です。高速分析や多成分一斉分析においても、信号強度の低下やゴーストピークの発生を最小限に抑え、ハイスループットで信頼性の高い定量結果がえられます。

UFsweeper

UFswitching™

感度のロスがない高速正負イオン極性切替技術UFswitching

UFswitchingは、超高速な正負のイオン極性切替を実行しながら、イオン強度を低下させることなく、常に安定したデータ取得ができる技術です。特許技術である高速応答高電圧電源の採用により、わずか5 msec の超高速正負イオン化切替を実現しています。正負イオン同時測定を実施する場合、極性の切り替えに要する時間が定量精度に大きく影響します。UFswitchingにより、わずか数秒の間に、同時に複数の極性が異なる成分由来の信号ピークが現れるような場合でも、優れた定量結果をえることができます。

UFswitching
高速正負イオン化切替(5 msec)を用いて測定した場合と
正イオンと負イオンを別々に測定した場合の比較

UFscanning™

どのようなスキャンスピードでも、マススペクトルのクオリティをキープする超高速スキャン技術UFscanning

マススペクトルのような分子量情報を得るためには質量設定をスキャンしてデータ採取することが必要です。UFscanningは、スキャンスピードに応じて質量分析部の電極(四重極ロッドなど)へ印加する電圧をコントロールすることにより、超高速なスキャンスピードでも高いイオン透過率を維持できる技術です。30,000 µ/sec*の超高速スキャンでも感度低下や質量誤差を最小限に抑えます。さらに0.1 µ刻みでスペクトルデータを採取できるため、常にハイクオリティなマススペクトルがえられます。

* LCMS-8050以降の機種

UFscanningグラフ

UF-MRM™

超高速×高感度MRM測定を実現するUF-MRM

MRM(multiple reaction monitoring、多重反応モニタリング)は、質量分析計の主要な種類のひとつであるトリプル四重極型質量分析計を用いたターゲット成分の定量分析に用いられる手法です。UF-MRMでは、イオンの高効率・高速搬送技術と高速な電圧切替技術を組み合わせることにより、高感度でありながら、1秒間に最大555回*の超高速分析を可能にします。高感度と高速の組み合わせが、より簡便かつ迅速な多成分一斉分析を可能にします。

* LCMS-8050以降の機種

UF Technologiesを搭載している製品: