SCD Technology

SCDとは

SCD(Sulfur Chemiluminescence Detector)では、GCのカラムから溶出したサンプル(硫黄化合物)をバーナー(レドックスセル)に導入し、酸化反応と還元反応をさせます。サンプル(SOラジカル)をリアクションチャンバに運び、オゾンと衝突させる時に発する光をホトマルで検出します。このような測定原理によって、SCDは硫黄化合物のみに対して感度を持ち、複雑なサンプルマトリックス中の極微量な硫黄化合物を選択的に検出できます。

SCDとは

参考文献:Robert L. Grob PhD , Eugene F. Barry PhD (2004)Modern practice of gas chromatography, 4th edition. Wiley-Interscience

島津独自技術を使用したSCD

SCD-2030は、島津独自の方式を採用した化学発光硫黄検出器(SCD)です。飛躍的に高まった感度と安定性、優れたメンテナンス性と業界初の自動化機能が、ラボの生産性を向上させます。

特徴(1):業界初! 横置き方式のバーナー

バーナーはGCのカラムと接続する必要があるため、GC本体の上に縦置きすることがこれまでの常識でした。しかし、島津製作所の開発チームは、縦置きではバーナーとリアクションチャンバをつなぐパスが長くなってしまい、これが検出感度を低下させることを見出しました。

そこで、SCD-2030では、バーナーを横向きに配置する方式を採っています( 特許出願中 )。このブレイクスルーにより、バーナーとリアクションチャンバをつなぐパスは従来品に比べ格段に短くなっています。これがウルトラショートフローパスです。

業界初! 横置き方式のバーナー

SCD-2030特有の横置きバーナーを保護すべく、世界各国で意匠権を保有しています。(保有意匠権:日本国意匠登録番号:第01633437号 、中国意匠登録番号CN 201930053585.7 、欧州意匠登録番号006260642、韓国意匠登録番号30-1036711号、米国意匠登録番号D895462号)

業界初! 横置き方式のバーナー

特許出願中 PCT/JP2019/002999、PCT/JP2019/035192

さらに、バーナーを横向きに配置したことで、GCの左右どちらにでもSCDを配置することができます。

業界初! 横置き方式のバーナー

特徴(2):全く新しいバーナーのかたち 三重管構造

インダクションチューブ
●インダクションチューブ
従来のインナーパイロチューブ・アウターパイロチューブに、新たにインダクションチューブを加えてバーナーを三重管構造としています( 特許出願中 )。この構造にすることで、反応領域に導入する前の酸素を予熱することができ、酸素中の不純物を除去し酸化能力の向上に成功しました。
アウターパイロチューブ&インナーパイロチューブ
●アウターパイロチューブ&インナーパイロチューブ
従来より長いアウターパイロチューブとインナーパイロチューブの組み合わせによって、反応領域である酸化部・還元部を広く確保でき、サンプルの充分な酸化還元反応が可能となります。これは特徴1の横置き方式を採用したために実現できた構造です。炭化水素マトリックスサンプルの分析や高いカラム流量を採用する分析メソッドにおいて、高い安定性の分析結果に寄与します。

特許出願中 PCT/JP2018/047046

インレットチューブ
●インレットチューブ
バーナーの中にカラムの出口端の部分を高温から守る「不活性雰囲気部」を搭載しました。カラムを挿入する場所としてインレットチューブを設け、チューブの中に不活性ガスを導入することで実現しています( 特許出願中 )。高温環境で酸素とカラムが接触することにより引き起こされる、カラムブリード(カラムの固定相の一部が分解され、その分解生成物が溶出して検出結果に悪影響を与える現象)を防ぎます。

さらに、バーナーは高温に温調されており、酸化還元の反応が起こる部分では反応熱によって1800℃程度まで温度が上昇します。特にアウターパイロチューブは、この温度上昇の影響を受けて熱膨張をするため一定の状態に保持することが困難でした。
SCD-2030では、1点のOリングのみでアウターパイロチューブを保持しています。これによって、熱膨張の影響を吸収して安定してアウターパイロチューブを保持することに成功しています。これは、インダクションチューブを有するSCD-2030ならではの技術です。

Nexisならではの技術

特徴(3):リアクションチャンバの設計

SCDでは、バーナーで反応させたサンプルをリアクションチャンバに運び、オゾンと衝突させます。その時に発する光をホトマルで検出することで、サンプル中の硫黄の量がわかります。
従来は、リアクションチャンバでSOとオゾンを反応させるのみですが、SCD-2030では反応後の励起状態のSO2がリアクションチャンバ内に長時間留まるように形状を工夫しています。これによって、ホトマルで発光を検出する時間を稼げるため高感度に検出ができます。

SCD(従来品)


従来のSCDグラフ

SCD-2030(島津製品)


島津のSCDグラフ

特徴(4):業界初! 自動化機能ANALYTICAL INTELLIGENCE

分析可能な状態に準備するまでの複雑な作業を、業界で初めて自動化しました( 特許出願中 )。SCDでは、バーナーとリアクションチャンバを分析可能な状態にするためのスタートアップ作業が存在し、その作業の順番やタイミングを誤ると、正確な測定ができない、装置の一部が損傷するなどの恐れがあります。
熟練者でなくても分析ができる装置を提供したいという、技術者の思いが詰まった機能です。

操作手順

特許出願中 PCT/JP2019/003679、特願2019-017208

独自技術が生み出すさまざまな効果

世界最高レベルの感度

バーナーで生成されるSOラジカルは不安定な成分ですが、ウルトラショートフローパスにより、高速でリアクションチャンバに導入することで、感度ロスを防ぎます。
バーナーの三重管構造やリアクションチャンバ内部の形状によって、さらに感度を向上して、既存製品の2.5倍の感度を実現しています。

世界最高レベルの感度

安定性の高い分析

バーナーの三重管構造によって、セル内の反応領域と反応時間を十分に確保することができ、サンプルの酸化還元反応を促進します。また、横置き方式の採用により、高温であるGC本体との間で対流が生じません。これにより,高カラム流量でサンプルが導入されても安定性の高い分析を実現します。

安定性の高い分析

メンテナンス性向上

横置き方式を採用したことで、メンテナンスが必要な部分が装置の側面に位置しています。アクセスが容易になったことで、従来問題になっていたインナーパイロチューブの交換時間を大幅に短縮しました。

メンテナンス性向上

本機能を搭載した製品:

Nexis SCD-2030

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