島津製作所の中国グループ会社の島津企業管理(中国)有限公司(以後SSL)では、ブランドの認知度と一貫性を高めることを目的として、オリジナルフォント「Shimadzu Genso Sans」を作成しました。手書きに宿る温もりを受け継ぎ、自然の美しさを一画一画に込めたデザイン。誰もが読みやすいユニバーサルデザインを採用し、現代のモバイル環境にも最適化しました。読む人に「Beauty of Health (健康の美)」と島津の精神を感じさせる文字です。
オリジナルフォントで島津の声を紡ぐ
初代島津源蔵の長男である二代目源蔵の手書き文字から受け継いだ温もりと筆の息づかいを礎に、「科学技術で社会に貢献する」という創業の志と情熱を、世代を超えて語り継ぐことを目指しました。筆跡に込められた温もりや自然なリズムを残しつつ、現代の情報環境にふさわしい明快さを併せ持つデザインへと昇華しています。オリジナルフォントの開発は、島津製作所にとって単なるフォントデザインの刷新ではなく、ブランドの精神そのものを受け継ぎ、未来へと伝える取り組みとなりました。

名前の由来
Shimadzu Genso Sans「島津源創体」 の名称は、島津製作所の精神を象徴する「源流(Genryu)」と「創造(Souzou)」という言葉から考案しました。また、中国語では「原创(Genso)」と同音であり、オリジナリティを表す響きを持ちます。さらに、日本語では「幻想(Genso)」と同音で、夢や理想を追い求める精神を重ねています。この多義的な響きは、科学と創造、そして夢を追う姿勢を体現し、Shimadzu Genso Sans のアイデンティティをより深く印象づけます。
開発の経緯
SSLの宣伝部では中国大手のフォントベンダー Hanyi Fonts と協業して開発チームを作り、日本の本社デザイナーの意見も取り入れ、約1年にわたる試行錯誤を経てフォントを完成させました。


手仕事の再現:筆跡のかすれや強弱をどのようにデジタルフォントへ落とし込むか、最も難しくもやりがいのある課題でした。「一画一画に込められた想いを壊さないこと」を重視しました。

可読性への挑戦:世界に7億人いる読字障害者のために、文字の類似性を減らし、誤読を防ぐ工夫を導入。特にb と d のような鏡文字は、線のカーブを調整することで視認性を改善しました 。

多言語設計:日本語、中国語、ラテン文字、ギリシャ文字を含む多言語に対応。科学研究での数式表記や国際的な発信にも耐えうる構成を実現しました 。
デザインの特徴
デザインは筆致を残すストロークを特徴として、筆で書いたときの自然なリズムと温もりを表現しています。また、視覚的に落ち着きを感じさせ、ブランドの「安定感」を体現するために、安定した重心にしています。さらに、印刷物や小さな画面でも読みやすく、複雑さを抑えたユニバーサルデザインとして仕上げています。


活用シーンとブランドへの広がり
Shimadzu Genso Sansは、パッケージ、展示会、マニュアル、ポスター、動画、ソフトウェア UI など、あらゆるシーンで使用されています。その結果、島津のブランド認知が向上するとともに、社員やユーザーが「文字を通して島津の精神に触れる」体験を得られるようになりました。







