特集論文
島津評論 82〔3・4〕 197~204 (2025)
要旨
糖鎖はDNA・タンパク質に次ぐ「第三の生命鎖」として注目されてきたが,その構造の複雑さや分析技術の制約により,ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオームに比べて大規模解析の進展が遅れてきた。2000年代以降,質量分析技術の進歩により糖鎖解析への有効性が示されると,島津製作所も質量分析計を基盤とした糖鎖微量迅速解析装置AGA やErexim Application Suite などを開発し,市場に提供してきた。近年,新たな試みとして,糖鎖に対する新しい化学修飾技術を中核とした産学連携を推進している。シアル酸を含む糖鎖の質量分析における課題を解決するために開発したシアル酸結合様式特異的修飾法SALSA は,シアル酸を化学的に中性化・安定化し,結合様式に応じて質量差を付与することで,質量分析のみでα2,3- とα2,6- の結合異性体を識別化する技術である。産学連携による改良と応用展開を経て,SALSA 法は想定以上の広がりを見せ,現在では日本の大型研究プロジェクトでの糖鎖解析基盤技術の一端として活用されるまでに至っている。本稿では,SALSA 法とその試薬キット SialoCapper™-ID Kit に関するこれまでの産学連携の展開と歩みを概観する。
1分析計測事業部Solutions COE ヘルスケアソリューション ユニット 博士(理学)
2田中耕一記念質量分析研究所 博士(工学)
3東京都健康長寿医療センター研究所老化機構研究チーム プロテオーム研究 博士(薬学)
4名古屋大学糖鎖生命コア研究所(iGCORE) 数理解析部門 グライコーム解析 博士(生命科学)
5名古屋大学糖鎖生命コア研究所(iGCORE) 数理解析部門 グライコーム解析 博士(地球環境科学)
*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。


