島津評論 Vol.82[3・4](2025)
特集 産学連携による知の融合と価値創出

特集論文

脂質解析統合プラットフォームの開発 ─リピドミクスの標準化を目指して─

藤本 浩史1松本 健太2山田 真希3朝野 夏世4永瀬 葵1長野 直子5早川 禎宏6中谷 航太7馬場 健史8池田 和貴9

島津評論 82〔3・4〕 189~196 (2025)

要旨

脂質分子は健康の維持増進だけでなく,そのバランスの破綻がさまざまな疾患と関連するために,分子レベルで包括的に捉えるリピドミクスが注目されている。しかしながら,脂質は多種多様でその濃度域も幅広いために,まだリピドミクスの技術的なハードルが高く,標準化や施設間でのデータの相互利用の実現には課題が多い。
これらの問題の解決に向けて,かずさDNA 研究所・九州大学・島津製作所との共同プロジェクトを立ち上げ,脂質解析統合プラットフォームの構築に取り組んだ。これまでに,血液中の脂質を対象として,Zone ①メジャー脂質類,Zone ②オキシリピン類,Zone ③ステロール脂質類に区分し,Zone ごとにLC/SFC-MS によるワイドターゲット分析法を開発した。また,本プロジェクトでは自動前処理装置の開発にも取り組み,前処理からLC/SFC-MS 分析までをシームレスにオートメーション化することに成功し,熟練技術者と同等の定量性や再現性を得ることが可能になった。
この統合プラットフォームの開発が今後さらに進むことで,リピドミクスの未経験者を含めて,施設間でのデータの相互利用が可能となり,研究開発の促進化や効率化につながると考えられる。また,本プロジェクトで開発した自動化技術は,メタボロミクスといった,ほかのオミクスへの応用も可能であり,自動計測を基盤とした次世代マルチオミクスは,医療・ヘルスケアなどのさまざまな分野の発展に貢献することが今後期待される。


1分析計測事業部Solutions COE ヘルスケアソリューションユニット
2分析計測事業部ラボメカニクスビジネスユニット
3島津企業管理(中国) 有限公司 博士(エネルギー科学)
4分析計測事業部Solutions COE ヘルスケアソリューションユニット 博士(学術)
5島津総合サービス
6分析計測事業部Solutions COE
7新潟大学大学院医学部医学科研究推進センター 博士(工学)
8九州大学大学院システム生命科学府 博士(工学)
9かずさDNA 研究所生体分子解析グループ 博士(薬学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。