島津評論 Vol.82[3・4](2025)
特集 産学連携による知の融合と価値創出

特集論文

構造化培養肉製造技術の社会実装:多機関コンソーシアムによる取り組み

井上 信介1山本 林太郎1松崎 典弥2,3

島津評論 82〔3・4〕 181~188 (2025)

要旨

2050年に世界人口が約100億人へ達すると予測される中,食糧タンパク質の需給逼迫による「タンパク質クライシス」が懸念されている。従来の畜産に代わるソリューションとして動物細胞由来の培養肉が注目されているが,特に“ステーキ肉” のような構造化培養肉(筋肉・脂肪・血管を含む立体組織をもつ培養肉)の開発は技術的ハードルが高く,これを克服することが本物の肉に近い食感・風味を実現する鍵となる。大阪大学や島津製作所など産学官の5機関は,2023年に「培養肉未来創造コンソーシアム」を結成し,異業種協働で3D バイオプリンタを活用した高級牛肉のような霜降り培養肉の製造技術確立と社会実装に挑んでいる。本稿では,構造化培養肉技術の背景とコンソーシアムによる技術開発の現状,社会実装に向けた取り組み(大阪・関西万博での展示など),そして今後の展望について解説する。


1分析計測事業部技術部
2大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 教授 工学博士
3培養肉未来創造コンソーシアム代表者

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。