島津評論 Vol.82[1・2](2025)
創業150周年記念特集 社会に貢献する科学技術

特集論文

バイオ医薬品の研究開発・品質管理に貢献する自動化技術

澤村 功

島津評論 82〔1・2〕 43~48 (2025)

要旨

高い治療効果と少ない副作用のため近年バイオ医薬品が急速に普及してきており,高いニーズに応えるため世界のバイオ医薬品生産量は年々増加している。抗体医薬品はバイオ医薬品の中でも特に消費されており,バイオ医薬品市場全体における約50%を占める。抗体医薬品の原料となる抗体は,遺伝子組み換え技術を利用した細胞を培養し生産するため,低分子医薬品と異なり製造手法が複雑で多くのステップが必要となる。抗体医薬品の品質担保のために培養プロセスは制御されており,その確認として培養液をサンプリングし各種検査を行う。この検査の一つとして培養液中の抗体に修飾されている糖鎖を分析しプロファイルを確認しているが,糖鎖を分析するまでの前処理に大きな手間を要するため課題となっている。
本稿では,抗体医薬品の品質管理や培養プロセス開発に貢献する自動前処理装置として開発した糖鎖自動前処理装置MUP-3100の概要と,抗体医薬品の重要品質特性の一つであるN-結合型糖鎖分析に適用した事例を紹介する。


分析計測事業部ラボメカニクスビジネスユニット

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。