特集論文
新規イオン解離法OAD を用いた脂質異性体のハイスループット構造解析
島津評論 82〔1・2〕 35~42 (2025)
要旨
タンデム質量分析(MS/MS)法は生体分子の構造解析に必要不可欠な技術であり,試料イオンとのガス衝突を用いる衝突誘起解離法(CID)-MS/MS が汎用される。しかしながら,CID は分子構造中の結合エネルギーが弱い箇所が優先的に解離しやすく,化学構造が未知の物質に対しては十分な構造情報が得られないことも多い。そこで著者らはCID と相補的に利用が可能な新たなMS/MS 法Oxygen Attachment Dissociation(OAD)-MS/MS を開発した。OAD-MS/MS は,試料イオンと気相ラジカルとの相互作用を用いた島津オリジナルの解離手法であり,CID では得られなかった異性体を含む生体分子の分子構造を得ることも可能である。本稿では,質量分析計を用いたノンターゲットリピドミクスへの適用例について紹介する。
分析計測事業部ライフサイエンス事業統括部 MS ビジネスユニット博士(工学)
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