島津評論 Vol.81[3・4](2024)
特集 食で実現する人と地球の健康と持続可能な食農産業

特集論文

エネルギー分散型蛍光X 線分析装置ALTRACETM による
昆虫食中ミネラルおよび有害重金属の分析

守屋宏一

島津評論 81〔3・4〕 123~130 (2024)

要旨

近年,昆虫は環境負荷の低さと高い栄養価から,持続可能な食材として注目を集めている。2013年に国連食糧農業機関(FAO)が発表した報告書では,世界人口の増加による食糧不足の深刻化が指摘され,昆虫食がその有力な解決策として提案された。これを受けて,世界的に昆虫食の市場規模は拡大を続け,関連する学術的研究も増加しているが,特にミネラル成分に関する知見は依然として不足している。ミネラル成分は人間の健康や栄養バランスにおいて重要であり,その詳細な分析は昆虫食の有用性を科学的に裏付けるうえで必要不可欠である。
さらに,食の安全性評価の観点から,有害重金属の分析も重要である。昆虫が飼育される環境や餌に含まれる有害重金属が,食材としての昆虫に蓄積される可能性があるため,その含有量を把握し,安全性を確保することが求められる。
本稿では,エネルギー分散型蛍光X 線分析装置(EDX)ALTRACE を用い,昆虫食の代表例であるコオロギに含まれるミネラル分および有害重金属の分析を報告する。EDX は簡便な前処理で迅速に分析できることから,その有効性についても考察する。


分析計測事業部Solutions COE マテリアル/ インフラストラクチャーソリューションユニット

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。