特集論文
島津評論 80〔3・4〕 175~184 (2023)
要旨
島津製作所はこれまで高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)による培養上清中の培地成分および代謝物の一斉分析技術を開発してきた。培養上清中のアミノ酸や核酸関連化合物などの144種の成分が短時間で一斉分析可能であり,培地成分の枯渇など培養条件最適化に有用な情報を取得することを実現した。
一方で取得した膨大なデータを解釈し,効率的な培養を行うための培養条件の検討はユーザーの試行錯誤に依存しているという課題があった。本課題を解決するために,AIを用いた培養最適化に強みを有するエピストラ株式会社との共同開発に着手し,同社の最適化エンジンを搭載したデータ駆動型の培養最適化支援ソフトの製品開発を進めている。本製品を用いたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の抗体生産に対する培養最適化の実証実験では,AIによる実験条件の生成を4回実施し,コントロールに対して約40%の抗体濃度の増加が実現できた。
本稿では,開発中のソフトウェアの概要と実証実験の詳細を報告する。
1分析計測事業部 ダイアグノスティクス事業統括部 細胞ビジネスユニット
2基盤技術研究所 バイオ・ケミカルユニット 博士(農学)
3基盤技術研究所 バイオ・ケミカルユニット
4分析計測事業部 技術部
5エピストラ株式会社
6エピストラ株式会社 博士(システム生物学)
7分析計測事業部 ダイアグノスティクス事業統括部 細胞ビジネスユニット 博士(生命科学)
8分析計測事業部 ダイアグノスティクス事業統括部 細胞ビジネスユニット 博士(工学)
*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。