島津評論 Vol.80[3・4](2023)
特集 ダイアグノスティクス

特集論文

圧力駆動型人体模倣システム(PD-MPS)の開発

藤山 陽一1三宅 力1大久保 智樹1杉浦 慎治2叶井 正樹3

島津評論 80〔3・4〕 165~174 (2023)

要旨

近年,動物実験禁止の流れが強まるなか,実験動物とヒトの種差を解決する新しいツールとして人体模倣システム(MPS: Microphysiological System)の注目度が高まっている。著者らは日本医療研究開発機構(AMED)のプロジェクトに参画しながら,圧力駆動型の人体模倣システム(PD-MPS)の開発を進めている。このシステムで用いるデバイスは従来用いられているウェルプレートと似た形状をしているが,底面に形成する流路により培地をウェル間で送液できるという特徴をもつ。さらに圧力駆動型送液の特長を生かし,一般的なポンプを用いる流体デバイスと比較して少ない配管で運用が可能であり,デバイスホルダーを使用して簡便な操作でデバイスと圧縮空気配管の接続が可能な構成を実現している。本稿では,開発中のデバイスの概要や,このデバイスに対応するシステム開発の状況,さらには PD-MPS を用いた薬剤透過アッセイの評価について紹介する。


1基盤技術研究所 バイオ・ケミカルユニット
2産業技術総合研究所 細胞分子工学研究部門 博士(工学)
3基盤技術研究所 バイオ・ケミカルユニット 博士(工学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。