島津評論 Vol.80[3・4](2023)
特集 ダイアグノスティクス

特集論文

新生児マススクリーニングにおける最新分析技術の紹介

谷川 哲雄1服部 考成2國澤 研大1小林 弘典3

島津評論 80〔3・4〕 107~114 (2023)

要旨

欧米をはじめとした世界各国において,先天性代謝異常症などの新生児マススクリーニング(NBS)が実施されている。我が国では,約20疾患がスクリーニングされているが,近年は拡大新生児マススクリーニングという形で,ライソゾーム病をはじめとした新たな疾患のスクリーニングも実施され始めている。NBSの検査では,タンデムマスなどの分析機器が使用されるが,より精度の高い分析手法が求められるとともに,拡大NBSにおいてもタンデムマスの使用場面が増えている。そのため,NBSにおける分析技術の研究開発は重要である。本稿では,著者らが研究開発したNBSにおける最新分析技術を二つ紹介する。一つ目のイソ吉草酸血症の偽陽性低減手法に関しては,異性体の判別には確認イオン比が有用であることがわかった。現行のタンデムマス・スクリーニングの分析メソッドに,確認イオンを追加設定することで,抗菌薬由来の偽陽性と疾患由来の陽性を識別できるようになった。二つ目のLC-MS/MSによるグリコサミノグリカン(GAG)の分析手法に関しては,ろ紙血のGAGというムコ多糖類を二糖化酵素で前処理し, LC-MS/MS で定量する分析条件を最適化した。その結果,疾患特異性が高く,高感度で安定した分析手法を確立することができた。


1分析計測事業部 ダイアグノスティクス統括部 臨床・微生物検査ビジネスユニット
2分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 MSビジネスユニット 博士(工学)
3島根大学医学部附属病院 検査部 講師 博士(医学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。