島津評論 Vol.79[3・4](2022)
特集 次世代モビリティ

特集論文

中距離水中光無線通信装置「MC500」の開発

西村  直喜

島津評論 79〔3・4〕 215~222 (2022)

要旨

中距離水中光無線通信装置「MC500」を開発した。主に,水中(海)において,水中ロボットと水上船の間を双方向にオンラインで結ぶデータ通信装置である。これまで,水中ロボットの操作は,電源線と通信線を複合化したケーブルによる遠隔操作が主流であったが,ケーブルは水中で抵抗となるため,水中ロボットの機動性が失われる。ケーブルの切断事故もたびたび発生している。そのため,水中ロボットの駆動に関してはバッテリー,通信の無線化の開発が近年盛んになってきている。水中通信手段としては,クジラの会話で知られるように,水中では音がよく伝搬することがわかっている。その性質を利用し,水中音響通信が実用化されており,現在主流の無線通信手段となっているが,高速化が試みられてはいるものの,海中の雑音,ドップラ効果の影響により,動画を安定的に伝送できる速度は実現できていない。また,通信データ量が同じ場合1000倍近く電力量も必要となる。高速化,低消費電力化を図るため,海水中での減衰が低い可視光波を利用した水中光無線が脚光を浴びている。一方で,水中を伝送路として利用するため,光の減衰率の影響を考慮する必要があり,自然界におけるさまざまな環境下での光減衰率を計測したうえで,開発を進める必要があった。ここでは,その開発の経緯および開発した装置の主要性能諸元,今後の製品展開を紹介する。


航空機器事業部 磁気装置部

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。