島津評論 Vol.79[3・4](2022)
特集 次世代モビリティ

特集論文

In-situ X 線 CT 機械試験観察システムにおける
試験技術の検討・開発および CAE 解析技術との連携

中山 貴司1大源 知秀1利倉 隆浩1榊原 辰雄2池上 泰史2下野 祐典2望月 優輝3

島津評論 79〔3・4〕 181~200 (2022)

要旨

X 線 CT は,物体の内部構造を非破壊で観察することができる技術である。この特長を生かし,市販の X 線 CT 装置を改造することなく,X 線 CT 装置内の回転ステージ上に小型試験機を置くだけで,引張,圧縮,曲げ,穿刺試験などの機械的負荷を受けた状態の物体の断層像が撮影できる装置を開発した。この装置を用いることで,従来のビデオ式の画像相関法などでは不可能だった三次元および内部構造の観察が可能となり,さらに段階的に負荷を増加させながら撮影した三次元画像を時系列にまとめた4D-CT データによって,構造の変化,ひずみ,空隙の形状および体積変化,き裂進展の状況をさまざまな角度から把握できる。また,当該試験機は従来の in-situ X 線 CT 用試験機では不可能だった大きな試験片や部品を試験することができ,単にき裂や損傷のミクロな現象の観察だけではなく三次元の画像相関法を用いて試験対象内部の三次元の変位やひずみを定量することができるようになり,試験計測と CAE(Computer Aided Engineering)解析との新たな連携の可能性が広がった。本稿では,当該装置の説明,撮影例,試験方法,デジタルツインとしての CAE 解析技術との連携事例を報告する。


1株式会社島津テクノリサーチ
2伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
3サーモフィッシャーサイエンティフィック

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。