島津評論 Vol.79[1・2](2022)
特集 グリーンイノベーション

特集論文

応力発光材料を用いた6061アルミニウム合金の変形における力学的挙動の可視化

金丸 訓明1

島津評論 79〔1・2〕 93~104 (2022)

要旨

近年,環境負荷低減材料として注目を集めているアルミニウム合金は,その軽量性から自動車用部材へのさらなる展開が期待されている。しかしながら,パネルなどを対象としたプレス加工への応用を考える場合,しわやひびなどの加工不良の低減が大きな課題となっていた。その改善には,材料の加工時の変形に相当する応力状態を可視化し,その変形挙動を事前に把握しておくことが重要である。上記課題の解決を目的として,負荷荷重に応じた強度で発光する応力発光材料を気相粉砕加工でより微細化し,この粒子とスクリーン印刷技術を組み合わせることで,従来膜より一桁薄く(t ≃5 μm),膜厚の均一性や再現性に優れる応力発光膜を印刷する技術を確立した。上記応力発光膜により6061アルミニウム合金(Al-Mg-Si 系合金)試験片において,しわを発生させる不均一変形帯(Lüders 帯)の出現や破断プロセスの進行を引張試験中に直視観察することができたので,その詳細を別途試作した脱着可能な応力発光シートの概要と併せて報告する。


1分析計測事業部技術部

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。