特集論文
海洋生分解性プラスチックの分解メカニズムの解明および安全性評価に関する研究
島津評論 79〔1・2〕 39~48 (2022)
要旨
海洋プラスチックごみ問題の解決を目指し,海洋生分解性プラスチックの開発・導入が進められているが,生分解メカニズムや安全性に関する報告は少ない。本稿では,各種質量分析計を用いて生分解の進行を実測し,化学物質の収着が平衡に達する時間を検討した結果を報告する。海洋生分解性プラスチックであるPHBH と海水を用いた生分解試験により,PHBH の構成単位であるモノマー2種と複数のオリゴマーが検出された。モノマー,オリゴマーの定量結果と生分解度を考察した結果,さらに分解が進んでいる可能性が示唆された。化学物質の収着実験を行った結果,PHBH に対するアセトアミノフェンの収着は認められなかった。PHBH に対する多環芳香族炭化水素(PAHs)の収着は,72時間で平衡に達し,これは低密度ポリエチレン(LDPE)と同等であった。ただし,一部のPAHs について分配率の差がみられ,LDPE よりもPHBH のほうが低かった。
1株式会社島津テクノリサーチ
2株式会社島津テクノリサーチ 博士(工学)
*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。