特集論文
マイクロプラスチックの解析に向けた熱分解GC/MS による樹脂混合試料の分析
島津評論 79〔1・2〕 31~38 (2022)
要旨
大きさ数μm~5 mm 程度のマイクロプラスチック(MPs)は,海洋環境の汚染や生態系に及ぼす影響が懸念されているため,その実態調査や有害性評価が行われている。分析装置としては主にFTIR が使用されているが,複数種類の微小な粒子が混在してMPs の分別が困難である場合には,熱分解GC/MS 法(Py-GC/MS 法)が有用であると報告されている。Py-GC/MS 法は各樹脂に特有の熱分解生成物をターゲット化合物とし,サンプルの熱分解生成物から,そのターゲット化合物を検出することで,混在した微量の樹脂をそれぞれ個別に定性することが可能である。本稿ではMPs を模した四種類の樹脂の混合試料を準備し,Py-GC/MS 法により各樹脂の特有の熱分解生成物をそれぞれ追跡することで,複数樹脂が混在した中でも個々の樹脂の含有を正確に特定できたことを報告する。さらに多くの樹脂への応用や各樹脂の定量も可能と考えられ,本手法はMPs を解析する有効な手法として期待される。
1分析計測事業部Solutions COE グリーンソリューションユニット
2分析計測事業部ライフサイエンス事業統括部 MS ビジネスユニット
3分析計測事業部環境ビジネスユニット
*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。