島津評論 Vol.78[3・4](2021)
特集 先端技術開発

特集論文

XspeciaTM による化学結合状態解析の新展開 ─リン酸鉄リチウムイオン電池正極材への応用─

高橋 和裕1米田 哲弥1鈴木 桂次郎1古川 博朗1大森 崇史2佐藤 賢治2小林 美佐子3向井 孝志3田中 秀明3妹尾 博3柳田 昌宏3

島津評論 78〔3・4〕 235~244 (2021)

要旨

リチウムイオン電池(LIB: Lithium-ion battery)中の正極材に含まれる物質の化学状態変化に関する知見を得るには,かつては主に放射光施設に頼らざるを得なかったが,同時多波長分散型蛍光 X 線分光法(PS-WDXRF)を用いる XspeciaTM の登場により,実験室で簡便に観測することが可能となった。これまでに著者らは,Xspecia を用いて NCM 三元 系 LIB 正極材に使用される Ni,Co,Mn の化合物を測定し,各元素の形式酸化数と蛍光 X 線ピークのエネルギーシフトに相関関係があることを確認した。また,LIB の充放電に伴う正極材中の前記元素の価数変化を推定することにも成功した。
今回は,NCM 三元系 LIB 正極材以外の正極材への展開の可能性を探るために,リン酸鉄リチウム(LFP: LiFePO4)系正極材を用いる LIB に対する測定を行った。その結果,これまでの三元系正極材と同様に,充放電に伴う Fe の価数変化をピークシフトとして観察することに成功し,さらに価数較正曲線を利用することで,Fe 元素の相対的な価数変化を推定することができた。


1分析計測事業部 X 線 / 表面ビジネスユニット
2基盤技術研究所 先端分析ユニット
3国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 電池技術研究部門

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。