島津評論 Vol.78[3・4](2021)
特集 先端技術開発

特集論文

マイクロチップ電気泳動装置 MCE-202“MultiNATM” を用いた抗体医薬品の
N-結合型糖鎖の高スループットスクリーニング

木下 充弘1曽我部 有司2坂本 泉3

島津評論 78〔3・4〕 213~222 (2021)

要旨

抗体医薬品中の糖鎖は,製造プロセスを管理するうえでの重要品質特性であり,製造現場では迅速簡便なスクリーニング法が求められている。しかしながら,従来の HPLC を中心とする分離分析法では,試料調製段階の高スループット化が達成できても,分離分析そのもののスループットを向上させることは原理的に難しい。一方,核酸分析用マイクロチップ電気泳動装置(MultiNA)は,セミパラレルに複数試料の分析を実行でき,高スループット化を実現できる唯一の分離分析装置であるといえる。本稿では,マイクロチップ電気泳動装置 “MultiNA” を活用する抗体医薬品中の糖鎖解析について紹介する。開発した方法を種々の抗体医薬品糖鎖分析に応用したところ,抗体特有の主要な2本鎖糖鎖(G0F,G1F,G1F′,G2F),さらにシアロ糖鎖や α-Gal 含有糖鎖も含め分離検出でき,糖鎖 CQA(Critical Quality Atribute)に基づき工程管理を行いながら品質設計を行う QbD(Quality by Design)アプローチを実践していくうえでの強力な分析手段となりうることが示された。


1近畿大学薬学部創薬科学科薬品分析学研究室 博士(薬学)
2分析計測事業部グローバルアプリケーション開発センター
3株式会社アクロスケール 博士(薬学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。