島津評論 Vol.78[3・4](2021)
特集 先端技術開発

特集論文

新規三次元培養基材 HYDROXTM の開発
ヒト iPS 細胞から肝細胞への分化誘導およびヒト初代培養肝細胞培養への適用評価

榎本 詢子1松井 勇人2

島津評論 78〔3・4〕 193~202 (2021)

要旨

近年注目されている再生医療分野においては,高機能な三次元細胞塊を簡便に作製する技術が求められている。二次元や三次元の細胞培養用材料として動物性由来成分を含む細胞外マトリックス(製品名:マトリゲル)を用いたものがゴールドスタンダードとして用いられている。しかしながら,動物から細胞外マトリックスを作製するために動物ごとのロット間差によって実験の結果にばらつきが生じることや,4℃付近で使用する必要があるなど,操作面で問題点が指摘されている。
そこで,これまで著者らは,化学合成品である両親媒性ポリマー(親水部:ポリサルコシン,疎水部:ポリ乳酸)から新規細胞培養基材(HYDROX)を開発してきた。化学合成品を使用することで,実験結果のばらつきの解消や操作性・安全性の向上が期待できる。本稿では,細胞の三次元培養のための HYDROX コーティングプレートの作製方法および,実際に細胞を培養した結果について紹介する。


1基盤技術研究所 バイオインダストリーユニット 博士(工学)
2基盤技術研究所 バイオインダストリーユニット 博士(薬学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。