島津評論 Vol.78[3・4](2021)
特集 先端技術開発

特集論文

アルツハイマー病における血漿アミロイド β 測定法の開発と意義

金子 直樹1

島津評論 78〔3・4〕 153~162 (2021)

要旨

アルツハイマー病(AD)は認知症の約60~70%を占める病型で世界的な社会課題となっている。AD 疾患修飾薬の臨床研究では AD 病理を有する早期患者を対象とすることから,被験者スクリーニングのための血液バイオマーカーが求められていた。著者らは免疫沈降と MALDI-TOF MS を組み合わせた IP-MALDI-MS を開発し,質量分析による血漿アミロイド β(Aβ)検出に初めて成功した。この技術を用いて血漿 APP669-711/Aβ1-42比がアミロイド PET と相関する新規バイオマーカーであることを報告した。さらに,日本とオーストラリアからの症例において,APP669-711/ Aβ1-42比,Aβ1-40/Aβ1-42比,および,それらの組み合わせ(composite biomarker)がアミロイド PET と高い一致性があることを示した。疾患修飾薬の進展に伴い血液バイオマーカーの価値は高まっており,治験における被験者の組み入れや薬効モニタリング,診療における AD 診断補助での使用が期待されている。


1田中耕一記念質量分析研究所 博士(理学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。