普通論文
トリプル四重極型質量分析計による血中トリグリセリド分析法の開発
島津評論 78〔1・2〕 131~137 (2021.9)
要旨
トリグリセリド(TG)は血中脂質の主要成分であり,エネルギーの貯蔵および輸送物質として生命維持に不可欠である。通常の血液検査ではトリグリセリドの総量が見積られているが,トリグリセリドに結合する多様な脂肪酸(FA)についての定量的知見は得られない。著者らは,高速液体クロマトグラフ-トリプル四重極型質量分析計を用い,血中トリグリセリドに結合する脂肪酸を定量的に解析する手法を開発した。本分析法は195個のMRM(multiple reaction monitoring)トランジションにより,分子量の異なる47種類のトリグリセリドの測定を1分析11分(130分析/ 日)で可能とする。構築した分析法を用いて市販のヒト血漿2種および血清サンプルを分析した。検出したトリグリセリド成分の多変量解析により,血中トリグリセリドの微細なサンプル差に寄与する成分を捉えることができた。さらに脂肪酸ごとのレーダーチャート表示により,サンプル間の脂肪酸バランスの違いを可視化することができた。
1分析計測事業部グローバルアプリケーション開発センター
2分析計測事業部グローバルアプリケーション開発センター 博士(エネルギー科学)
*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。