島津評論 Vol.78[1・2](2021)
特集 産業機器

特集論文

食品用真空オーブン

田中 優1武田 直也1上野 真義1森元 陽介1

島津評論 78〔1・2〕 11~17 (2021.9)

要旨

食品の真空オーブンによる加熱処理は,真空下で沸点が下がる水の蒸気圧特性を利用した低温での水分除去作用,食品内部と周囲環境との圧力差を利用した膨化作用が特徴である。これらの作用で,加熱によって失われていた素材の風味の維持,栄養・機能性成分の変性・消失の抑制,処理物の材料や形状によっては新しい食感の創出や,熱によって生成される有害物質の抑制が期待される。一方で,真空下での加熱処理は気体が少ないため熱対流の影響が小さく,一般的に温度分布を均一にすることは難しい。そこで本開発では熱解析を用いてヒータ配置,ヒータ出力と出力分布,またヒータ周囲構造および構造材料の最適化を行い,1.5m×2m の大面積の処理エリアにおいても良好な温度分布を実証でき,真空オーブン量産装置の実現に繋げることができた。本稿では,これらの成果について紹介する。


1産業機械事業部技術部

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。