島津評論 Vol.77[3・4](2020)
特集 食の安全と食による健康

普通論文

超臨界流体による油汚染土壌中キノン類のオンライン抽出─分離分析の検討
~微生物活動量のモニタ~

松本 恵子1山口 忠行2舟田 康裕3打木 弘一4

島津評論 77〔3・4〕 165~174 (2021.3)

要旨

油汚染された土壌を微生物の力により分解/ 無害化するバイオレメディエーションでは,浄化プロセスにおいて,微生物の活動量をモニタリングすることが重要視されている。微生物の生息状況をモニタリングする方法には総菌数調査や遺伝子解析などが知られているが,いずれも手間や時間を要する。そのために,前処理を含めた簡便かつ効率的な方法が求められている。
キノン類(細胞膜の呼吸における電子伝達物質)を微生物の活動量の指標とし,高速液体クロマトグラフィ ーを用いた分析により微生物の量や変化を把握するキノンプロファイル法が確立されている。キノンプロファイル法は微生物群の分解能力を簡便に評価できるが,土壌からキノン類を抽出する前処理が長時間かつ煩雑であることが課題であった。
 そこで著者らは土壌中キノン類の抽出と定量の効率化を目的として,超臨界流体抽出(SFE)と超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)をオンラインで組み合わせた"オンラインSFE-SFC-MS システム"を構築し,微生物活動量モニタリングの省力化ならびに効率化について検討した。煩雑な前処理操作を行うことなく抽出から分離検出までを自動化し,キノン量の測定時間を大幅に短縮したことから,微生物量のモニタリングの一助となりうることを示した。


1分析計測事業部ライフサイエンス事業統括部LC ビジネス ユニット
2分析計測事業部グローバルマーケティング部
3分析計測事業部ライフサイエンス事業統括部LC ビジネス ユニット博士(工学)
4基礎地盤コンサルタンツ株式会社

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。