島津評論 Vol.77[3・4](2020)
特集 食の安全と食による健康

特集論文

高速MRM によるヒト血中脂質分析法の開発と食品分析例

山田 真希1

島津評論 77〔3・4〕 125~134 (2021.3)

要旨

近年のトリプル四重極型質量分析計のMRM(multiple reaction monitoring)の高速化により,多様な脂質成分を網羅的に解析できる手法が開発され,疾患マーカー探索に応用されている。本稿では,ヒト血清中の脂質の高速MRM による分析法の開発と応用について説明する。著者らはこれまでに開発したリン脂質のプロファイリング法によりヒト血清を分析し,検出されたリゾリン脂質とジアシルリン脂質のMRM を構築した。続いて,トリグリセリド,コレステリルエステル,コレステロール,および遊離脂肪酸のMRM を加えた。クロマトグラフィー条件を改良し,19分サイクルで分析できるメソッドとした。ヒト血清中から主要脂質100成分を検出し,リン脂質とトリグリセリドについては,脂肪酸の組み合わせ異性体の帰属ができた。本手法による食品(サバ)の分析例を紹介し,ヒト血清との脂肪酸バランスの違いについて議論する。


1分析計測事業部グローバルアプリケーション開発センター博士(エネルギー科学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。