島津評論 Vol.77[1・2](2020)
特集 ライフサイエンス

特集論文

移動相のミクロ流量化によるLC-ESI/MS 分析の高感度化

渡邊 京子1小栗 将照2Mikael Levi2荒尾 洋平2福井 航2松原 稔哉3今村 信也4柳林 潤5Davide Vecchietti6軍司 昌秀7寺田 英敏4中山 大介4岩田 庸助4平野 一郎2国広 沖之4向畑 和男2小倉 泰郎8

島津評論 77〔1・2〕 93~104 (2020.9)

要旨

LC-ESI-MS/MS 分析は優れた選択性と感度から,さまざまな分野で用いられる。LC/MS 分析のさらなる高感度化は,LC 部のスケールダウンで達成できる。内径0.1mm 以下のカラムと1µL/min 以下の移動相流量で使用するナノLC/MS 分析は,優れた感度が得られる反面,長大な分析時間と専門性の高い操作性が課題である。一方,内径0.1~1mm 程度のカラムと数µL/min~数十µL/min の移動相流量で使用するミクロLC/MS は,汎用LC/MS 分析と同等の操作性や分析時間を維持しながら感度に優れるといった面が期待される。
島津製作所製Nexera MikrosTM は,高感度,操作性,頑健性を特長とするミクロ流量LC-MS システムである。ミクロ流量送液において安定かつ効率的なESI を実現し,汎用LC/MS 比で数倍~数十倍の高感度を達成する。 UF-LinkTM 機構は,デッドボリュームなくカラムを簡単かつ確実に取り付け,ピーク拡散を抑制して高感度化に貢献する。さらに1500回の血漿分析においても性能を維持し,汎用LC/MS と同様のスループットを要する試験においても安定稼働が期待できる。
本稿では,ミクロ流量LC/MS 分析の原理や概要とともに,Nexera Mikros の各特長と,高感度分析を達成したアプリケーションを報告する。


1分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部LC ビジネスユニット博士(薬学)
2分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部MS ビジネスユニット
3分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部MS ビジネスユニット博士(理学)
4分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部LC ビジネスユニット
5基盤技術研究所 バイオインダストリーユニット
6分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部LC ビジネスユニット博士(生化学)
7分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部LC ビジネスユニット博士(工学)
8分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部MS ビジネスユニット博士(工学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。