島津評論 Vol.77[1・2](2020)
特集 ライフサイエンス

特集論文

イメージング質量顕微鏡iMScopeTM QT による生体分子の解析

緒方 是嗣1竹下 建悟2寺島 健太2山本 卓志3脇 華菜4笠松 郷志5原田 高宏5

島津評論 77〔1・2〕 69~78 (2020.9)

要旨

質量分析イメージング(Mass Spectrometry Imaging:MSI)法はマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)などで,組織切片上の任意部位をイオン化し,次にこれを質量分析計(TOF-MS)で分析するという原理に基づいている。この手法は生体組織の切片上において,数千~数万点に及ぶ質量分析データの膨大な情報から任意の分子情報のみを選択的に解析し,強度分布を画像化するものである。iMScope QT は,分布情報の画像化において,精密な光学画像を顕微鏡により取得することで,正に,二次元レベルでの詳細な質量分析を可能にするものである。この手法によりペプチド,脂質などを生体組織上で位置情報を保持したまま解析することが可能になる。病態解析などへの応用が報告され,MALDI-TOF-MS による分析応用という意味でもMSI 法は,質量分析法の用途拡大に関して一つの分岐点であると言える。本稿ではiMScope QT と前処理システム,ソフトウェアについて説明する。


1分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 MS ビジネス ユニット博士(農学)
2分析計測事業部 技術部
3分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター
4分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター 博士(理学)
5分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 MS ビジネスユニット

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。