島津評論 Vol.77[1・2](2020)
特集 ライフサイエンス

特集論文

培養上清の多成分分析によるヒト多能性幹細胞の未分化性評価法の開発

豊田 健一1黒田 博隆1山本 貴子2有田 真緒2鈴木 崇3高橋 雅俊4江連 徹5川真田 伸2

島津評論 77〔1・2〕 31~38 (2020.9)

要旨

培養上清分析による細胞非侵襲的な培養モニタリング技術の確立を目的として,著者らは液体クロマトグラフ質量分析計を用いた培地成分および分泌代謝物の一斉分析手法を開発し,これまでに未分化状態の多能性幹細胞に特徴的なマーカー候補成分Kynurenine を同定した。今回,著者らは分泌代謝物を中心に測定成分を拡充することで,より網羅的な培養上清の多成分一斉分析手法を新たに開発した。開発した分析手法を用いて未分化細胞/ 分化細胞の培養上清をそれぞれ測定した結果,未分化細胞に特徴的なマーカー候補成分としてN-formyl kynurenine を新たに同定した。本化合物は,上述のKynurenine より培養の早期段階において分化細胞と顕著な差を示した。このように,測定対象成分の拡張によって,より有効なマーカー候補成分が探索可能であることが示唆された。


1分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 細胞事業開発室
2公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構 細胞療法研究開発センター
3分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 細胞事業開発室博士(農学)
4基盤技術研究所 新事業開発室
5分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 細胞事業開発室博士(工学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。