島津評論 Vol.77[1・2](2020)
特集 ライフサイエンス

特集論文

シアル酸結合様式特異的修飾法SALSA の開発とGPI アンカー糖鎖解析への応用

西風 隆司1

島津評論 77〔1・2〕 11~18 (2020.9)

要旨

糖鎖の質量分析は,近年の分析装置そのものの高性能化やソフトイオン化技術・イオン開裂技術の発展によりごく一般的な技術になってきたが,質量が同じ異性体の判別はなお難しい現状がある。特に,不安定なシアル酸の含まれるシアリル糖鎖の分析とその結合様式の解析は困難であり,質量分析を用いた糖鎖解析の弱点の一つであった。著者らが開発したシアル酸結合様式特異的修飾法SALSA は,化学修飾によりシアル酸を保護すると同時に,その結合様式に依存した質量変化を与えることで結合様式異性体を質量分析で判別できるようにする新技術である。本稿では,SALSA 法の開発と応用について述べる。応用としては,SALSA 法の利点の一つである,結合様式が規定された標品を必要とせず,質量分析のみでシアル酸の結合様式の判別ができるという特徴を生かし,GPI アンカーのシアル酸結合様式を判別した事例を紹介する。


1分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター博士(理学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。