島津評論 Vol.75[3・4](2018)
特集 先端技術開発

特集論文

気相ラジカルを用いた新規タンデム質量分析装置(HAD-MS/MS)の開発

高橋 秀典1

島津評論 75〔3・4〕 123~129 (2019.3)

要旨

タンデム質量分析(MS/MS)法は生体分子の構造解析に必要不可欠な技術であり,試料イオンとのガス衝突を用いる衝突誘起解離法(CID)-MS/MS が汎用される。しかしながら,CID は分子構造中の結合エネルギーが弱い箇所が優先的に解離しやすく,化学構造が未知の物質に対しては十分な構造情報が得られないことも多い。そこで著者らはCID と相補的に利用が可能な新たなMS/MS 法(HAD-MS/MS)を開発した。HADMS/MS は,試料イオンと気相ラジカルとの相互作用を用いた島津製作所オリジナルの解離手法であり,CIDでは得られなかった異性体を含む生体分子の分子構造を得ることも可能である。本稿では,ペプチドの翻訳後修飾解析,脂質の二重結合位置およびトランス脂肪酸分析への適用例を示し,HAD-MS/MS の有用性を紹介する。


1田中耕一記念質量分析研究所 博士(工学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。