島津評論 Vol.75[3・4](2018)
特集 先端技術開発

特集論文

ポリサルコシン-ポリ乳酸(PSar-PLLA)ポリマーゲルの開発

松井 勇人1榎本 詢子2

島津評論 75〔3・4〕 113~121 (2019.3)

要旨

近年注目されている再生医療分野においては,高機能かつ安全性の高い三次元細胞集合体を作製する技術が求められている。そこで著者らは,両親媒性ポリデプシペプチド(親水部:ポリサルコシン(PSar),疎水部:ポリ乳酸(PLLA))ポリマー(PSar-PLLA)から新規ハイドロゲル(PSar-PLLA ゲル)の開発を試みた。PLLA は,人工骨などの生体材料として応用されており,PSar は体内のタンパク質加水分解酵素により分解されるため生体適合性が高く,ポリエチレングリコール(PEG)に代わる親水性高分子材料として期待されている。したがってPSar-PLLA ゲルが作製できれば,細胞を包含することで,安全に細胞集合体の形成が実現できることが期待される。本稿では,PSar-PLLA ポリマーからPSar-PLLA ゲルを作製する手法や粘弾性解析をはじめとする物理的および化学的特性解析について紹介するとともに,PSar-PLLA ゲルを用いた細胞の三次元培養について紹介する。


1基盤技術研究所バイオインダストリーユニット 博士(薬学)
2基盤技術研究所バイオインダストリーユニット 博士(工学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。