島津評論 Vol.75[3・4](2018)
特集 先端技術開発

特集論文

航空機搭載用 二相流体熱輸送システムの開発

山本 将之1重定 頼和1関本 峻介1渡邉 紀志2長野 方星3

島津評論 75〔3・4〕 103~111 (2019.3)

要旨

既存の航空機で広く採用されている液冷システムと比較して小型・軽量・低電力(あるいは無電力)といった特長を持ち,航空機の燃費効率の向上に寄与しうる先進的な冷却・熱輸送技術である「二相流体熱輸送システム」の航空機搭載に向けた二種類の研究開発について紹介する。一つは,冷媒を循環する駆動源として小型の電動ポンプを用いたアクティブ・ポンプ方式,もう一方は,多孔質体の毛細管力を利用して無電力で冷媒を循環するループ・ヒート・パイプである。著者らは,航空機搭載に適した作動流体としてR245faを用いた二相流体熱輸送システムを設計・試作して実験室環境での性能試験を実施し,アクティブ・ポンプ方式では16個の蒸発器を並列設置して20 kWの,ループ・ヒート・パイプでは2個の蒸発器を並列設置して400 Wの安定した熱輸送を実現した。現在は,R245faの代替冷媒で地球温暖化係数が1以下のR1224yd(Z),R1233zd(E)などの新冷媒を用いて航空機搭載環境での性能試験を進めており,2019年度末までに地上でのシステム成立性の確認を完了する予定である。


1航空機器事業部 技術部
2名古屋大学大学院 工学研究科 工学博士
3名古屋大学大学院 工学研究科 博士(工学)

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。