特集論文
質量分析用マイクロチップ固体UVレーザの開発
島津評論 74〔3・4〕 121~126 (2018.3)
要旨
従来,MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)質量分析装置には窒素レーザが使われてきた。近年,この装置に固体レーザが使われ始めているが,長いパルス幅,大きいサイズおよび高いコストが欠点になっている。
そこで,サブナノ秒のパルス幅を持つ,非常にサイズが小さく,低価格の固体マイクロチップUV レーザを開発したことを紹介する。このレーザでは,モノリシックレーザキャビティーを励起するために,特許申請済みであるフリースペースビームを採用してサイズとコストを減じる。1064 nm の基本波は,和周波発生を利用して,3倍波の355 nm UV に変換される。この手のひらサイズのレーザでパルスエネルギー30 µJ を超え,パルス幅600 ps,繰り返し周波数1~50 Hz の出力が得られる。
この新たに開発されたレーザは,高分解能,費用対効果の高い卓上型MALDI 質量分析装置を可能にする。病院,研究所,さらに宇宙ミッションでも質量分析装置の利用を革新的に変えるポテンシャルがある。
1デバイス部 センサ・デバイスビジネスユニット 博士(工学)
2デバイス部 センサ・デバイスビジネスユニット
3デバイス部 センサ・デバイスビジネスユニット 博士(理学)
※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。