特集論文
MALDI-MSによるバクテリア分析
島津評論 74〔1・2〕 51~62 (2017.9)
要旨
質量分析は迅速・高感度に細胞成分を検出することが可能なため,1970年代からバクテリア分析に利用されてきた。1990年にマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(matrix-assisted laser desorption/ionization- mass spectrometry: MALDI-MS)が実用化され,タンパク質にまで解析対象が広がると,それを用いたバクテリア分析が急速に進展した。MALDI-MSにより観測されるバクテリアのタンパク質の多くが,リボソームタンパク質であることが明らかになると,それを指標としたバクテリアの同定手法が提案された。リボソームタンパク質は保存性が高いため,属や種を決定する指標になると考えられていた。さらに詳細な解析により亜種や株の違いが識別できる可能性が示唆され,系統分類にまで応用されるようになった。現在もなお,臨床分野を中心に,積極的に微生物迅速同定のための研究が進められている。試料菌体処理法やデータベースに関して,今後のさらなる発展が期待される。
1田中耕一記念質量分析研究所 博士(工学)
*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。