島津評論 Vol.73[1・2](2016)
特集 バイオミメティクス

普通論文

真空加圧焼成炉VESTAを用いた高純度窒化物蛍光体の合成

山梨 遼太1長谷川 拓哉1金善旭1,2上松 和義1戸田 健司1佐藤 峰夫3小向 孝宗4

島津評論 73〔1・2〕 89~95 (2016.9)

要旨

研究開発用途の真空加圧焼成炉VESTAを使った高純度窒化物蛍光体の合成について紹介する。原料である窒化カルシウムの仕込み量を化学量論比より増量して赤色窒化物蛍光体CaAlSiN3:Eu2+(CASN)を合成することで,発光強度を向上させることに成功した。窒化カルシウムの揮発特性は焼結助剤を含まない高純度のPBNるつぼを用いることで評価した。1400~2000℃で合成したCASN試料中のCa量を定量した結果,加圧条件(0.9MPa)下においても焼成温度の上昇に伴いCa量が減少していることが明らかになった。Ca量の減少に伴うAlNの残存量は,化学量論比で合成した試料においては19.9mol%であったのに対し,Ca3N2を60mol%過剰に仕込んで合成した試料においては10.8mol%に減少し,発光強度は化学量論比の原料で合成した試料に比べて166%に増大した。したがって,揮発原料を過剰に加えて本来の反応に必要な窒化物原料を仕込むことで,より高純度な窒化物蛍光体が得られ,窒化物蛍光体がもつ本来の発光特性を発現させることが可能となった。


1新潟大学大学院 自然科学研究科
2世宗大学校工学部 ナノテクノロジー先端材料工学科
3新潟大学工学部 化学システム工学科
4島津メクテム株式会社

*島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。