島津評論 Vol.72[3・4](2015)
特集 先端技術開発

特集論文

樹脂上への高速スパッタ成膜機構の研究

市岡 聖菜1吉牟田 利典1徳田 敏1上野 智子2今井 大輔2吉岡 尚規2尾崎 悟3佐藤 敏幸1

島津評論 72〔3・4〕 195~202 (2016.3)

要旨

高速スパッタリング成膜法では,従来のスパッタリング成膜装置と比較して,より短時間で反射率が良好,かつ,立体形状への回り込みも良好な金属薄膜成膜を実現することができる。しかしながら,メタクリル樹脂(アクリル)は,金属薄膜との密着性が低く,その表面に適正な金属薄膜を形成することが一般的に困難であり,高速スパッタリング成膜法でも,剥離が生じていた。その原因として,スパッタ成膜により樹脂表面が脆化し,脆化層ごとAl膜が剥離していることを明らかにした。スパッタ成膜中の樹脂表面脆化,すなわち,樹脂表面の分子鎖の切断を防ぐためにSi-O結合を含む化合物層を密着良く堆積し,密着性を向上させる手法を見いだした。


1基盤技術研究所 放射線デバイスユニット
2産業機械事業部 事業開発部
3島津エミット株式会社

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。