島津評論 Vol.72[3・4](2015)
特集 先端技術開発

特集論文

ポリ乳酸系両親媒性ポリマーミセル「ラクトソーム™」を用いたTheranostics

小関 英一1原 功2

島津評論 72〔3・4〕 89~99 (2016.3)

要旨

著者らは,新規両親媒性ポリデプシペプチド(親水部:ポリサルコシン,疎水部:ポリ乳酸)の自己組織化により形成される高分子ミセル(ラクトソーム™)を開発した。ラクトソーム™は,ステルス性が高いため内臓への集積が少なく,かつEPR効果により高選択的にがん組織に集積する。親水部を構成しているポリサルコシンは,生体中に見いだされるアミノ酸から構成され,現在,工業材料や医用材料の分野で多用されているポリエチレングリコールと同等以上の親水性を有しかつ生分解性を有する。また,疎水部のポリ乳酸も同様に,生分解性が知られており,骨吸収性材料などの医用材料に利用されている。ラクトソーム™は,従来の生体適合性ナノ粒子と比較して,粒径の調整およびペプチド等生体材料による修飾などの分子設計も容易であり,診断薬および医薬品の基材として期待できる。本稿では,ラクトソーム™を用いたTheranostics開発(診断“diagnostics”と治療“therapy”の融合)への取り組みについて紹介する。


1基盤技術研究所 新事業開発室 工学博士
2基盤技術研究所 機能材料ユニット 博士(理学)

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