島津評論 Vol.71[3・4](2014)
特集 化学工業材料の分析・評価

特集論文

かご型シルセスキオキサンを主構成要素として用いた
元素ブロック高分子材料の開発とその物性解析

井本 裕顕1前川 昂之1安本 勇太1荒木 斉1入江 康行1中 建介1武内 誠治2太田 充2西村 司2道下 晃2安居 嘉秀3

島津評論 71〔3・4〕 99~105 (2015.3)

要旨

かご型シルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric SilSesquioxane以下,POSS®)を主鎖に有する元素ブロック高分子およびPOSS®元素ブロックを開発し,その物性について詳細に解析した。従来のPOSS®材料の研究は,他の材料を補強する目的としてPOSS®を添加した分子設計がほとんどであったため,POSS®が本来有している力学的・光学的特性についての検討はなされてこなかった。今回著者らが開発したPOSS®を主構成要素として用いる透明材料は,これまで不可能であった「POSS®そのものの物性解析」を実現した。POSS®を主鎖に有するポリイミドは,POSS®の剛直性によってガラス転移温度を室温から350℃までに示さず,一方でPOSS®の嵩高さを反映して固体内に空隙を有した柔らかさを発現した。また,スター型POSS®元素ブロックは,熱可塑性を示す高透明性材料になることが明らかとなった。


1京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科
2分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター
3分析計測事業部 グローバルマーケティング部

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。