島津評論 Vol.70[3・4](2013)
特集 ライフサイエンス

特集論文

リボソームタンパク質をバイオマーカーとしたMALDI-TOF MSによる細菌識別
S10-GERMS法による細菌の迅速識別 ─

田村 廣人1堀田 雄大1,2島 圭介3船津 慎治4

島津評論 70〔3・4〕 157~170 (2014.3)

要旨

これまでのリボソームタンパク質をバイオマーカーとした微生物同定法は,系統解析をする上で次のような課題が存在した;1)基準株(Type strain)のゲノム解読情報が必要である;2)ゲノム解読されたリボソームタンパク質データベースにエラーが存在する;3)種レベルの系統学的距離を示すことが困難である。そこで,細菌に共通に存在するS10-spc-alphaオペロンにコードされるリボソームタンパク質をバイオマーカーとした MALDI-TOF MS(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry)による細菌同定・識別法(S10-spc-alpha operon Gene Encoded Ribosomal protein Mass Spectrum : S10-GERMS法)を確立した。本S10-GERMS法に使用するS10-spc-alphaオペロンは,約半数のリボソームタンパク質と数種のハウスキーピング遺伝子をコードするため,本オペロンの配列決定と MALDI-TOF MS測定により,データベース構築,校正および最適なリボソームタンパク質の選択が可能になり,種および株レベルの迅速・簡便な系統解析が可能であることを初めて示した。


1名城大学 農学部 農学博士
2クミアイ化学工業株式会社 生物科学研究所 農学博士
3分析計測事業部 グローバルアプリケーション開発センター
4分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 MS ビジネスユニット

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。