特集論文
血清メタボロミクスによる膵がんバイオマーカー探索
島津評論 70〔3・4〕 117~121 (2014.3)
要旨
ポストゲノム時代の到来により,ガスクロマトグラフィ質量分析(GC/MS)を用いたメタボロミクスによる疾患バイオマーカー探索が盛んに行われるようになった。メタボロミクスは,疾患の表現型をプロテオミクスやゲノミクスより直接的に反映することから,バイオマーカー探索に有用と考えられている。本稿では,GC/MS を用いた血清メタボロミクスが,膵がんに対するスクリーニング法としての有用性をもつのかを検証した。その結果,血清メタボロミクスの結果を用いた多変量解析によって,特定の4化合物の測定値をもとに検体提供者が膵がん患者である可能性を予測するモデルを構築することに成功した。この予測モデルは,切除可能な早期の膵がんでも高感度である上に,慢性膵炎では偽陽性となりにくく,臨床的課題を克服し,膵がん患者の予後を改善する手法として期待される。このように,GC/MS を用いたメタボロミクスは,疾患バイオマーカー探索に有用であり,また,今後のオミクスデータの統合的解析によって,様々な領域でバイオマーカーに留まらない新たな知見が得られる可能性がある。
1神戸大学大学院 医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野 博士(医学)
2神戸大学大学院 医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野 博士(農学)
3分析計測事業部 グローバルマーケティング部 博士(医学)
4神戸大学大学院 医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野 医学博士
5神戸大学大学院 医学研究科 内科系講座 病因病態解析学分野 医学博士
6神戸大学大学院 医学研究科 質量分析総合センター 医学博士
※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。