島津評論 Vol.70[3・4](2013)
特集 ライフサイエンス

特集論文

トリプル四重極型質量分析装置による一次代謝物の多成分一斉分析

中西 豪1菱木 貴子2,3森川 隆之2梶村 真弓2,3末松 誠2,3

島津評論 70〔3・4〕 109~116 (2014.3)

要旨

解糖系,ペントース・リン酸回路,TCA回路といった中心代謝経路に含まれる代謝物およびアミノ酸・ヌ クレオチドの中から55成分を分析対象として,トリプル四重極型質量分析装置による一斉分析メソッド,“一次代謝物 LC/MS/MS メソッドパッケージ”を開発した。一般にこのような親水性の代謝物を LC/MS で分析する際には,その高い極性のため,通常の逆相クラマトグラフィーでは代謝物を十分に分離することが困難となる。このため,本法では移動相にイオンペア試薬を加えることで,親水性を有する55成分の代謝物の分離を可能にした。また細胞や組織抽出物をはじめとする夾雑成分の多い生体試料を分析対象とするためには,高感度で選択性の高いトリプル四重極型質量分析計との組み合わせが極めて有効となる。本稿では,一次代謝物 LC/MS/MS メソッドパッケージの特長を概説するとともに,生体試料を用いた分析例を紹介する。


1分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 MS ビジネスユニット
2慶應義塾大学 医学部 医化学教室
3独立行政法人科学技術振興機構 ERATO 末松ガスバイオロジープロジェクト

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。