島津評論 Vol.69[3・4](2012)
特集 先端技術開発

特集論文

MALDI-TOF MSによるシステイン含有ペプチドの検出感度向上を目的とした,
ヨードアセチル骨格を有するイオン性マスタグの開発

嶋田 崇史1九山 浩樹2佐藤 孝明3田中 耕一4

島津評論 69〔3・4〕 223~232 (2013.3)

要旨

著者らは,システイン残基に結合し,ペプチドの高感度分析を可能とする,6つの新しいイオン性マスタグを開発し,その特性を解析した。このマスタグの構造的特徴は以下のとおりであり,これらの特性を一分子内に設計した。(1)チオールへの結合反応のためのヨードアセチル基を含有,(2)サンプルの物理吸着によるロスを低減するための親水的特性,(3)高いプロトン親和性を保持するための三級アミン,四級アンモニウム,もしくはグアニジノ基を含有,(4)衝突誘起解離による断片化を最小限にするためのアミド結合非含有。これらの新規マスタグを使いペプチドの質量分析感度を解析した結果,カルバミドメチル化ペプチドのコントロールと比較し,約2倍から200倍の感度向上を達成した。これらの新しいイオン性マスタグは,疎水性ペプチド,低含有量のバイオマーカー,それに循環中のホルモンなどの質量分析による解析に,十分応用可能である。


1基盤技術研究所 ライフサイエンス研究所 博士(学術)
2基盤技術研究所 ライフサイエンス研究所 博士(農学)
3基盤技術研究所 ライフサイエンス研究所 医学博士
4田中最先端研究所

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。