島津評論 Vol.69[3・4](2012)
特集 先端技術開発

特集論文

質量分析法と統計的学習機械を組み合わせた新規がん診断支援装置の開発

竹田 扇1吉村 健太郎1出水 秀明2平岡 賢三3谷畑 博司4田邉 國士5中島 宏樹6堀 裕和7

島津評論 69〔3・4〕 203~210 (2013.3)

要旨

著者らは従前のイオン化法とは異なり前処理が不要で迅速に数pLという極微量の試料をイオン化することが可能な探針エレクトロスプレー法(Probe ElectroSpray Ionization, PESI)と,得られたスペクトルを全て利用して経験的かつ高精度な予測が可能な学習機械(dual Penalized Logistic Regression Machine, dPLRM)を組み合わせることで,内視鏡室,検査室,手術室で即時診断可能な革新的がん診断支援装置の開発を進めている。本稿ではこの装置の基盤となっている上記二つの要素技術を簡単に紹介した後に,実際の具体的な応用例としてマウスを用いた解析,ヒトのがん組織を用いた判定例を紹介する。dPLRMを用いると一見違いがないように見えるがん組織と非がん組織のスペクトル群を高精度で識別することが可能であり,本装置の有用性が示された。


1山梨大学医学部 博士(医学)
2基盤技術研究所 博士(理学)
3山梨大学クリーンエネルギー研究センター 工学博士
4分析計測事業部
5早稲田大学 理学博士
6分析計測事業部 工学博士
7山梨大学工学部 工学博士

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。