特集論文
ビール中カビ毒14種のLC-MS/MS高速一斉分析
島津評論 69〔1・2〕 159~164 (2012.9)
要旨
カビ毒(mycotoxin)とはカビが産生する化学物質で,人や家畜の健康に悪影響を及ぼす。これらは,主に農作物を汚染するため,食品衛生上注意すべきリスク化学物質である。原料および製品の安全性を確保するため,食品中カビ毒の迅速分析が求められている。夾雑成分の多い食品中の微量カビ毒を分析するためには,高感度かつ高選択性の超高速液体クロマトグラフ-トリプル四重極型質量分析計(UHPLC-MS/MS)は有用な分析手段である。本稿では,毒性が高く食品への汚染リスクが考えられる代表的なカビ毒14種について,LCMS/MSによる高速一斉分析を開発したので紹介する。トリプル四重極型質量分析計LCMS-8030の超高速極性切替機能により,一度の分析で正イオン検出および負イオン検出のカビ毒を同時に測定し,分析時間を短縮できた。また,定量精度向上のため,キャリーオーバーの低減検討を行った。開発した分析法により市販ビール試料を測定し,本法が有効であることを確認できた。
1アサヒグループホールディングス株式会社 食の安全研究所
2分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部
※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。