島津評論 Vol.69[1・2](2012)
特集 食品分析

特集論文

FTIRとEDXによる食品中の異物分析

村上 幸雄1岩崎 祥子2武内 誠治2中村 秀樹2渡邊 信次3

島津評論 69〔1・2〕 133~142 (2012.9)

要旨

食の安全に対する消費者の関心の高まりを反映して,食品に関する苦情件数は依然として高い値を示している。食品メーカーは細心の注意を払って,異物混入の防止対策に注力しているが,完全に異物発生をなくすことはできない。食品異物の苦情に対する対応で重要なことは,迅速かつ正確にその分析結果を報告し,混入経路を解明することである。本稿では食品中に混入しやすい物質を選んで,フーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)とエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)で分析を行い,特に有機成分と無機成分を含む異物の場合に両者を相補的に活用することが効果的であることを確認した。また実際の異物分析の一例として,冷凍ピザの表面についた異物をFTIRとEDX,さらに電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて分析した。
FTIRとEDXによって有機および無機成分の定性情報,EPMAからはそれらの分布情報が得られるため,これらの分析手法が異物の原因解明に有効であることを紹介する。


1分析計測事業部グローバルアプリケーション開発センター工学博士
2分析計測事業部グローバルアプリケーション開発センター
3株式会社島津総合分析試験センター

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。