島津評論 Vol.66[3・4](2009)
特集 ライフサイエンス

特集論文

液滴操作による核酸抽出機能付きPCRデバイス

大橋 鉄雄1片所 功1西本 尚弘1阿部 浩久1

島津評論 66〔3・4〕 209~213 (2010.3)

要旨

微小液滴を磁場および電場でコントロールする新しいマイクロフルイディクスプラットフォームを確立し,核酸抽出とPCRを一体化した遺伝子検査用デバイスの開発を行った。シリカ磁気ビーズを用い,血液試料からの核酸抽出を行う前処理工程とPCR 工程を一つのデバイス内に統合し,シームレスに実行した。本デバイスを用い,ヒト血液試料(血清および全血)に含まれるヒトB型肝炎ウイルス(HBV)を検出対象として実施したところ,血清では50個/mL,全血で500個/mLの濃度で添加したHBV粒子の存在を確認できた。前処理にかかる時間は1分18秒,PCRにかかる時間は7~8.6分で,前処理からPCRまで10分以内で完了できた。本PCRデバイスは外部動力源との接続を全く必要としないため,完全密封型PCRデバイスへ発展させることができる。


1基盤技術研究所 マイクロTASユニット
※所属名は論文作成時のものです。

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