島津評論 Vol.66[3・4](2009)
特集 ライフサイエンス

特集論文

質量分析によるタンパク質・ペプチドC末端アミド化解析のための化学誘導体化を用いた新規手法について

中島 ちひろ1,2九山 浩樹3中澤 隆4西村 紀5綱澤 進6

島津評論 66〔3・4〕 185~194 (2010.3)

要旨

C末端ペプチドの単離およびC末端カルボキシル基の高選択的な誘導体化を可能にする化学的手法を組み合わせ,質量分析計を用いてタンパク質・ペプチドのC末端カルボキシル基修飾の有無を判断する方法を開発したので本稿で紹介する。この方法では,C末端カルボキシル基を選択的にメチルアミド(CONHCH3)に変換し,その質量差を1Daから14Daに拡大することにより,C末端カルボキシル基がフリー(COOH)であるかもしくはアミド(CONH2)であるかを正確に解析できる。C末端カルボキシル基以外のカルボキシル基はオキサゾロン形成による誘導体化に不活性であるため,本方法は側鎖上にカルボキシル基を有するアスパラギン酸およびグルタミン酸残基を含むペプチドにも適用できる。本方法はadrenomedullin, calcitonin, BSAの混合物を一つのモデルとした検討を行い,一連のプロセスを経て得られたそれぞれのC末端ペプチドのピークの詳細比較解析により本方法の有効性が示された。すなわち,この混合物の成分中BSAのC末端ペプチドのみ一連の反応後に13Daの質量増加を示し,adrenomedullin, calcitoninのC末端ペプチドが反応しなかったことから,三種の成分中これら二つの生理活性ペプチドのC末端構造がアミドであることを明確に示すことができた。なお,C末端(翻訳後)修飾の解析のためのこの方法の拡張可能性も本稿中で考察する。


1基盤技術研究所 ライフサイエンス研究所
2大阪大学蛋白質研究所
3大阪大学蛋白質研究所 博士(農学)
4奈良女子大学 理学部 理学博士
5大阪大学蛋白質研究所 薬学博士
6分析計測事業部 理学博士

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