島津評論 Vol.66[3・4](2009)
特集 ライフサイエンス

特集論文

ナノフローLC Prominence nanoの特長とプロテオーム解析への応用

増田 潤一1栗木 智子2箕畑 俊和2尾坂 裕輔1早川 禎宏1丸山 秀三1

島津評論 66〔3・4〕 151~159 (2010.3)

要旨

極微量成分の高感度検出を目的として,質量分析計のフロントエンドLCとしてナノフローLCが広く用いられている。特にライフサイエンスにおけるプロテオーム解析では複雑なマトリックスからの極微量成分の検出のみならず,試料間でのディファレンシャル解析のために保持時間の再現性も要求される。また,このような解析では多数のサンプルの分析が要求されることから,長期に渡る安定性や簡便な操作性も必要である。この要求に応えるために,ナノ流量域での安定送液のみでなく,システムとしての安定性や優れた操作性を向上させたナノフローLC Prominence nanoを開発した。本システムでは独自の,リフラックスフローコントロール(RFC)システムと称するフィードバック制御により600nL/minにおいても0.2%RSD以下の優れたピーク保持時間再現性を実現した。また,高感度化のためのトラップ濃縮注入用流路切換バルブとして開発したFCV nanoでは流路詰まりを防止するために磨耗粉の低減を実現した。さらに,これらシステムの簡便な操作を実現するためのソフトウエアNano-Assistも同時に開発した。
本稿ではこのProminence nanoシステムの優れた基本性能を紹介する。また,MALDI MSでのスポッティングの自動化を可能にするAccuSpotRおよび四重極イオントラップ飛行時間型質量分析計AXIMAR Resonanceと組み合わせたトータルシステムによる極微量ペプチドの検出例として,優れた精度でヒト血清中10fmolのデスアシルグレリンの分析が可能であることを紹介する。


1分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 LCビジネスユニット
2分析計測事業部 応用技術部 アプリケーション開発センター

※島津評論に掲載されている情報は、論文発表当時のものです。記載されている製品は、既に取り扱っていない場合もございますので、ご了承ください。