島津評論 Vol.66[1・2](2009)
特集 先端技術開発

特集論文

安定領域図による四重極質量分析計の特性評価

榮 欧樹1西口 克2上野 良弘1下村  学3

島津評論 66〔1・2〕 73~80 (2009.9)

要旨

四重極質量分析計は実用上の利点から広く利用されている質量分析計である。装置性能にはロッド構造が深く関わっており,安定領域図はそれを評価する有効な手段である。本稿では四重極ロッド構造と装置性能の関係を,安定領域図の観点から議論する。今回,四重極ロッドを理想的に配置した場合と,一つのロッドを中心軸方向に意図的にずらした場合との両方について実験により安定領域図を取得し,幾何学的なロッド配置のずれが原因で安定領域図内に不安定な線状の領域が生じることを確認した。またシミュレーションにより求めた安定領域図でも同様な領域が存在していることを確認した。これは高次の多重極場により生じるいわゆる非線形共鳴ラインである。なお,シミュレーションには高精度な電磁場解析やイオン軌道計算が可能な,独自に開発したソフトウェアを用いた。


1設計技術センター
2設計技術センター 博士(理学)
3分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 MS ビジネスユニット
※所属名は論文作成時のものです。

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